現職きのこ研究者が一般の方から生産者、研究者向けに「きのこの話題」を提供するブログです。あと、ランニング・アウトドアのおはなしも! In this blog, mycologist-O provides mushroom topics from the general public to producers and researchers!

きくらげのおはなし⑤「アラゲキクラゲ国内生産における問題~病害虫~」

きくらげのおはなし⑤「アラゲキクラゲ国内生産における問題~病害虫~」

スポンサーリンク

↓詳しくは記事を読んでね。

前回までにアラゲキクラゲの国内の栽培品種がたった9種に過ぎず、同じような品種ばかりが国内で栽培されると病気に対して脆弱になってしまう!と書きました。

では今回は前回のつながりでアラゲキクラゲの病害(病気)や害虫について書いてみるとしましょうか。

 
えっ?きのこにも病気があるの??

この前の記事にも少し書いてましたがきのこにも病気があります!
細菌やウイルスによる病気もありますし、カビによる病気もあります!きのこもカビと同じ菌なのにね!あと、虫による食害も!

そこで国内で報告されているアラゲキクラゲの病気や害虫を表にしてみようと調べてみましたがほとんど見つからず私の報告を含めて以下の3件だけでした。この理由はやはり国内生産がこれまで少なかったことから病害虫についても軽視される傾向があったのだと思います。

・子実体が溶解して不快な臭いを発するPseudomonas sp. による「腐敗病」(古川・野淵1986)
・蛾の一種、ムラサキアツバおよびナミグルマアツバの幼虫による食害(吉松ら2014)
・子実体上に拭っても除去できない綿状のカビが多発する「アラゲキクラゲ綿腐病」(奥田ら2016)

この中でも私が一番脅威に感じているのが 私が2016年に報告した「アラゲキクラゲ綿腐病」と思います。その名の通り、綿っぽいモフモフしたカビがアラゲキクラゲを覆い尽くし、急速に弱ってしまう病気です。この犯人はHypomyces pseudocorticiicolaというカビ(子嚢菌)です。

左は正常、右が病気のきのこです。
きのこの表面を覆っている白いカビがこのアラゲキクラゲ綿腐病です!

スポンサーリンク

実はこの菌、他のきのこの病害として既に知られているものでしたが、そのきのこは食用では無かったのであまり注目されていませんでした。しかしアラゲキクラゲで被害が確認できたことでその脅威が明らかとなりました。この病害菌の特徴としてアラゲキクラゲと同程度の温度で最も菌糸の伸長が早いという点が挙げられます。この特徴のせいでアラゲキクラゲの栽培環境下で大いに生長し、防除が困難になってしまうというわけです。また下の写真で分かるようにアラゲキクラゲの栽培で必須の散水によって下へと感染が広がります

↓置いてある棚の下にこのカビが付着しているのが見えます。

↑棚の下に垂れ下がる病害の菌糸がキモい・・!

私はこれまで鳥取県、広島県、愛媛県、宮崎県の4県で確認していますがこの病気は観察する時期によってはモフモフからベタっとした外観に変化し、胞子による汚れにも見えることから生産者も気づきにくく、潜在的な被害は大きいのではと考えています。現在、この病気に耐性のある栽培品種は存在せず、対策についても「栽培施設の換気を良くする」「古い菌床や腐ったきのこはすぐに処分し、栽培施設を清潔に保つ」くらいしかありません。多数の菌床を栽培している施設ではなかなか防除が難しく脅威です。

[まとめ]
海外では菌床に感染すると収量が劇的に低下するScytalidium lignicolaによる「Slippery Scar病」(Sun and Bian 2012)という病気なども報告されており、今後、アラゲキクラゲの国内生産が活性化することでさらに新たな病虫害が報告されることも予想されます。そのため、今後はこれら病害に対する対策や耐病性を考慮した品種の育成についても視野に入れる必要があるかと思います。

→次の記事きくらげのおはなし⑥「アラゲキクラゲ国内生産の脅威~食品表示の問題~」

スポンサーリンク

今日はここまで!


[引用文献]
古川久彦・野淵輝:栽培きのこ害菌・害虫ハンドブック.一般社団法人全国林業改良普及協会,東京 (1986)
吉松慎一・村上康明・前田由美:アラゲキクラゲを食害する2種のヤガ,蝶と蛾,65, 26-29 (2014)
奥田康仁・長澤栄史・常盤俊之・長谷幸一・村上重幸:Hypomyces pseudocorticiicolaによるアラゲキクラゲ綿腐病(新称)について,菌蕈研報,46, 23-29 (2016)

最新情報をチェックしよう!