現職きのこ研究者が一般の方から生産者、研究者向けに「きのこの話題」を提供するブログです。あと、ランニング・アウトドアのおはなしも! In this blog, mycologist-O provides mushroom topics from the general public to producers and researchers!

きのことSDGsのおはなし③「SDGs vs 企業努力 勝つのはどっちだ!?」

きのことSDGsのおはなし③「SDGs vs 企業努力 勝つのはどっちだ!?」

今日の!<これだけ知っていればOK!>
・きのこ栽培はSDGsにおける5項目に関わる持続可能な環境保全型農林業!
・きのこについて知ることはSDGsに貢献する!?
・SDGsへの取り組みは産官学の枠組みを越える国内きのこ産業全体の課題!
・日本独自の「持続可能なきのこ産業」の確立がSDGsへの貢献と新たなブランディングにつながる!
 
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↓詳しくは記事を読んでみてね~

前回の記事できのこ産業における大手企業が国内森林資源を使わないで海外からオガ粉の代わりにトウモロコシの芯(コーンコブ)を輸入していると書きました。これについてどーなの?という論調で記事を書いていましたが私自身、きのこ栽培用の原材料を海外から輸入するという国内課題について考えていて果たしてこれは一概に「悪」と見做して良いのか?と考えるようになったため、今回はこれについて率直に思ったことを書いてみたいと思います。

 
国内産の材料を使わないことは悪いことなの?

[企業の言い分]
まず、国外から輸入されている原材料はコーンコブ以外にもあります。栄養材として一般的な小麦ヌカ(フスマ)もその原材料である小麦は海外から来ていると言ってよいでしょう。しかし、「きのことSDGsのおはなし②」にも書いたように栄養材の使用する量は菌床中の1割程度となりごく僅かです。しかし、コーンコブは基材であるオガ粉の代わりになりますので菌床中の9割近くが輸入原材料となってしまいます。しかも大手企業が使うのでその量は莫大です。だからコーンコブがまず槍玉に挙げられるというわけです。

では、コーンコブがどのようなところで使われているのか、そしてどのような栽培上の効能があるのか調べてみました。

コーンコブはエノキタケやブナシメジ、マイタケ、エリンギと幅広く用いられているようです。
→引用:最新きのこ栽培技術(2014),プランツワールド

残念ながら効能について適切な文献が見つからなかったのですがこれまで記事に書いていたように「収量性が大きく上がる」という記載はいくつもみられました。他にもコスト削減もあるのではと私は思います。

きのこの価格は1パック100円以下であることもざらです。私もきのこ産業に関わる民間企業の人間なのでこのような大手企業はライバルのようなものですがきのこの価格競争が激しくなっている中、より低コストに収量性を挙げようとの企業努力は認められるべきではないかと思っています。

 
コーンコブを使うことは企業の経済活動において重要なんだね
じゃあSDGsではどう考えるのかな・・

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[SDGs上の主張]
ではSDGsの側面から見るとどうでしょうか。国内森林資源を使うことは山林の維持に繋がり、「11住み続けられるまちづくりを」をはじめ、12-15の目標に該当することは以前の記事「きのことSDGsのおはなし①」にも書いた通りです。

↓きのこ産業が関わる11-15の目標です。

CO2を多量に排出しわざわざ海外から輸入するのはせっかく他の国内きのこ産業がSDGsに貢献しているのに水を差しているともいえます。また、豊富な国内森林資源を使わず輸入品に頼ることは国益に適うとは言い難いですね。

 
じゃあ企業とSDGsへの貢献、どっちを優先すべきなの??

[どちらが正しいのか??]
ではどちらが正しいのかと聞かれると難しいですね。
ここまでの企業とSDGs双方の主張をまとめると以下のような構図になるのではないでしょうか。

以前の私なら大手企業が悪い!と決めつけていたかもしれませんが、色々な事情を目にする、耳にする中で視野が広がったことで一概にそう言い切れなくなってきました。

SDGsは世界の目標なんだから協力して当然だ!という声が上がるのも理解できますが民間企業がコスト削減や売るために鎬を削るのは当たり前であり、なによりコストや利益を無視してSDGsの基本である持続可能な発展はありえないでしょう。極端なコスト削減は誰かが犠牲になっているのではないでしょうか。原材料の供給元?生産者?はたまた低品質の商品を購入することになる消費者でしょうか?

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[まとめ]
私が思うにこの課題では国内きのこ産業の「持続可能な発展」がキーワードになるかと思います。より低コストで多収性を求める“企業=生産現場”の本音がこの課題の根底にあり,それに応える栽培品種の育成が望まれていると言えるでしょう。私のような品種改良や栽培に携わる研究者は国内資源を使っても問題なく収量が得られるような高品質な品種を作り出すこと、そして輸入する必要が無い有用な国内資源を見出すことを目指すべきと思います(これは私自身の戒めでもあります)。また現在、莫大な量の原材料を輸入して使っている企業は徐々にそれを減らす活動をすべきかと思います。例えばマッシュルームを生産している企業では栽培に使うマッシュルーム用の菌床を国内産に転換する動きがあるようです。きのこの国内需要が停滞状態となっている中でこのように少しずつ変えていく企業努力が日本独自の「持続可能なきのこ産業」の確立、SDGsへの貢献、ひいては国際的な信望を得た新たなブランディングにつながるのではと私は思います。

今日の!<これだけ知っていればOK!>
・きのこ栽培はSDGsにおける5項目に関わる持続可能な環境保全型農林業!
・きのこについて知ることはSDGsに貢献する!?
・SDGsへの取り組みは産官学の枠組みを越える国内きのこ産業全体の課題!
・日本独自の「持続可能なきのこ産業」の確立がSDGsへの貢献と新たなブランディングにつながる!
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