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きくらげのおはなし⑥「アラゲキクラゲ国内生産における問題~食品表示~」

きくらげのおはなし⑥「アラゲキクラゲ国内生産における問題~食品表示~」

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これまでにアラゲキクラゲの品種は他種きのこに比べて少ないこと、輸入に依存していたことから病害虫の調査が軽視されており、国内生産の脅威となっていることを書きました。
今回は消費者の皆さんに直接的に関係するアラゲキクラゲの「食品表示の問題」について書いてみたいと思います。

[原材料表記]
まず食品表示とは商品パッケージの裏面などにある原材料や加工者、原産国などの表記です。実はこれは非常に大事なものです。これは消費者が食品から確認できる唯一の情報源であり、企業や生産者の責任の所在を明らかにし、食の安全を担保するものだからです!

↓ある国内産アラゲキクラゲ乾物の食品表示。
明らかにアラゲキクラゲなのですが「きくらげ」としか書かれていません。

私はこれまで国内で流通するアラゲキクラゲ49商品を入手し、食品表示について調べました。すると興味深いことが分かりました。それは世の中に流通しているアラゲキクラゲの商品の原材料名がすごくいいかげんなことです!下の表のように「あらげきくらげ」、「裏白きくらげ」、「きくらげ」、「木耳」といった色んな表記があって、他の種であるキクラゲとの区別もできていないことが分かりました。

↓国内で流通するアラゲキクラゲの原材料表記。
国内産も外国産も本来の「あらげきくらげ(アラゲキクラゲ)」の表記はかなり少ないことが分かります。

 
アラゲキクラゲとキクラゲ、どっちでもいいんじゃないの?

いえいえそんなことはありません!

では不正確な表記はどのような問題を起こすのでしょうか?
上にも書きましたが食品表示は消費者にとっての唯一の情報源です。

だから、食品表示がいいかげんに書いてあると消費者は混乱し、アラゲキクラゲの食材としての信頼性を損なうだけでなく、安易な表示偽装をも助長しかねないのです。
→一昔前にも「ブナシメジ」を「ホンシメジ」とパッケージに書かれて売られていたりしましたが林野庁によってそのような慣行は改められたようですね。

 
じゃあその安易な表示偽装ってなあに?

[可能性①原産国偽装]
現状として問題は表面化していませんが今後、あり得るものとして原産国の偽装が想定できます。原産国偽装でこれまで泣かされてきたのが乾シイタケです。

2000年代には2,000-3,000トンもの外国産が国内産として販売されたと推定されており、シイタケの国内生産にとんでもない悪影響を与えました。

ですが研究者たちの健闘により、原産国を判別する技術が開発されたことで現在、産地偽装問題はコントロールされています。このような問題は実はアラゲキクラゲでは大いに起こり得る問題です。シイタケと同様(もしくはそれ以上に)、アラゲキクラゲは輸入に依存しており、外国産と国内産の価格差は3-5倍にもなります(もちろん国内産が高価です)。それに見た目では国内産も外国産も見分けがつきませんから外国産を国内産として偽装表示販売したり、故意に混入させるケースも考えられます。そのため、今後はアラゲキクラゲでも原産国判別技術の開発が期待されます!

[可能性②輸入菌床]
さて次にアラゲキクラゲの国内生産に対して脅威になり得る問題として「輸入菌床」があります。
シイタケでは2018年に輸入菌床の輸入量が過去最高になりました。結果として国内に流通する菌床生シイタケの10%が輸入菌床から発生したものとなり、当然のように国内産として販売されています。

これって別に法律違反でもなんでもないんですが消費者的な観点ではなんか裏切られたような気分になりませんか?

実際、林野庁は2020年、輸入菌床の国内産菌床に対する脅威を鑑みて「しいたけ(菌床栽培)について種菌を植え付けた場所と採取地が異なる場合は、採取地、栽培方法と併せて種菌を植え付けた場所も採取地とは区別して表示することが望ましい」との見解を出しています。

アラゲキクラゲにおいては全くその実態は明らかになっていませんがぶっちゃけると輸入菌床は国内において生産される菌床と比較してかなり安いのに国内産として販売できるため、菌床や種菌を扱う国内企業にとって大きな打撃となりますそのため、アラゲキクラゲを含めたシイタケ以外のきのこでも早急な対応を林野庁にはお願いしたいですね!

→「菌床って何?」という方は[きのこ栽培のおはなし①「菌床栽培ってどうやるの?」]をご覧ください。

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[まとめ]
ここに書いたアラゲキクラゲの食品表示に関わる問題は「原材料表記」以外は現状、そこまで大きく表面化してはいません。しかし、アラゲキクラゲに関わる人たちの意欲を削ぎ、安心・安全な国内産に対する消費者の信頼を大きく損なうものであり、今後の動向には注視が必要です。

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