キクラゲのおはなし⑩鳥取県がアラゲキクラゲの生産量全国1位に!!!
皆さん、こんにちはー!
昨年8月に令和3年の最新「特用林産基礎資料」が林野庁から発表されました。
この特用林産物とは森林等の野外における産物を示します。この産物とは主にきのこが占め、その他に胡桃などの木の実や木炭、タケノコ、樹脂、山菜など幅広いものを指します(一般的な木材は含まれません)。菌床栽培品のきのこは野外における産物とは正確には言えませんが以前は原木栽培が主流であったことからきのこは特用林産物として認識されています。上記の特用林産基礎資料とは国内の特用林産物の消費量や生産量、輸入量などの統計となっていて各品目の需要と供給が分かるものとなっています。データの取得は1年前に行われ、次年に発表されます。
アラゲキクラゲ(図1)は林野庁において「きくらげ類」として類別されており、実はこの中にはアラゲキクラゲ、キクラゲ、シロキクラゲが含まれています。そのため、消費量や輸入量などはごちゃまぜでどの”キクラゲ”が多いかは分かりません。ただし、国内の状況を見る限り、「生産量」はアラゲキクラゲ一択に絞られています。
私たち、日本きのこセンター菌蕈研究所主導で10年前に始まった鳥取県のアラゲキクラゲ生産プロジェクトですが、当初の生産量は500 kg/年でした。それが数年前から全国5位以内、令和2年には3位まで浮上しました。それが令和3年の調査ではとうとう悲願の1位を獲得したのです(図2)!
これはひとえに鳥取県内生産者の皆さんのおかげです。
そして陰ながらこのプロジェクトを支えてきたのが私が開発した「菌興AP1号」です(下図)。おかげさまで鳥取県だけでなく山口県や大分県の生産者においても好評をいただき、その生産は拡大しています。おそらく400トン程度の生産量があるのではないでしょうか。この品種が覇権を握った理由として以下があるかと思います。
1.生産者にとって一番大事なのは収量です。従来品種に比べ、どのような環境でも安定して収量が得られます。
2.栽培環境が悪くなるとアラゲキクラゲは色が薄くなることがよく有りましたが、本品種は従来の品種には無かった着色の安定性を獲得しています。つまり、ロス率が低いことを示します。
3.発生が早く、低温期が始まる10月に栽培を開始しても低温障害を受けにくいです。また培地配合の工夫次第で一般的な60日培養から40-50日まで短縮が可能です。さらに30日でも栽培が可能であることを研究で明らかにしています。
実は菌興AP1号は鳥取県以外にも山口県や大分県をはじめとした西日本一体で栽培されています。図2をもう一度ご覧ください。生産量の2位、3位は山口県と大分県が占めています。すなわち、山口県と大分県のアラゲキクラゲ生産量向上にも菌興AP1号は貢献しているのです。
このように生産者の皆さんと日本きのこセンター菌蕈研究所の連携によりついに鳥取県はアラゲキクラゲ生産において国内1位を取得することができました。しかし、山口県や大分県も迫ってきています。切磋琢磨してアラゲキクラゲ国内生産の強化に貢献しなければいけませんね。
これからもご声援よろしくお願いします!!