きのこ研究者が一般の方から生産者、研究者向けにユルく、時にスルドく「きのこの話題」を提供するブログです! In this blog, mycologist-O provides mushroom topics from the general public to producers and researchers!

薬用きのこの栽培学的研究②「茯苓」ブクリョウの栽培法の確立

日本国内でいわゆる「薬用」と呼ばれるきのこは慣習的に2種類あるようです。一つは漢方薬の材料「生薬」として厚生労働省が指定しているキノコです。もう一つはサプリメントなどの栄養食品として伝統的に知られているキノコです。サプリメントとしては霊芝(マンネンタケ)やアガリクスなどが有名で皆さんもご存じかもしれませんね。こちらについてはこちらをご覧ください→「霊芝」マンネンタケの栽培法の確立

漢方薬に使われる材料は生薬といい、これは厚生労働省が決めています。でもこの生薬に相当するきのこはたった2種類しかありません。それは「茯苓」(ブクリョウ)(下の写真をご覧ください)と「猪苓舞茸」(チョレイマイタケ)です。これらはほぼ中国から輸入されており、日本の漢方は中国産に完全に依存しています。

このページでは茯苓のお話を書きますがご存じない方が多いかと思います。

茯苓(ブクリョウ)とはサルノコシカケ科のキノコの一種で「菌核」といわれる栄養貯蔵器官を形成します。菌核というのは下の写真のような木のコブのように見えるブクリョウ菌糸の塊で自然界ではマツの根に形成します。生薬ではこの茶色い皮を剝いて内部の白い部分を大豆程度のサイズに裁断して乾燥したものが使われます。

野外で栽培された茯苓(ブクリョウ)

ブクリョウは漢方薬において非常重要な位置を占めます。

下のスライドのように生薬の国内使用量は全生薬中2位に位置し、その量は2000トン弱にもなります。また医療用漢方製剤148種中51種、つまり茯苓は漢方薬の1/3に使用される重要生薬といえます。

そもそも生薬の生産国は下のスライドのように中国産が80%以上を占めています。

かなり中国に強く依存していることが分かります。またその傾向は近年、さらに高まってきているようです。

漢方の材料「生薬」の輸入量。国産は10%程度しかありません。

では茯苓はどの程度輸入されているのでしょうか。

下のスライドをご覧ください。中国産が国内消費量の99.9%を占めています。

最近では記憶にも新しい日中間の関係の緊迫化もありました。もし生薬の輸出制限がされた場合、どうなるでしょうか。漢方薬はいきなり入手できなくなる可能性があります(もちろん各社在庫等あるでしょうから全くのゼロにはならないかもしれませんが)。

そこで私は茯苓の国内栽培を確立するため、栽培法を開発しました。

生薬大手のツムラではおが粉を使った菌床で栽培をされているようでしたのでこちらでは原木(丸太)を使った栽培を採用しました。その理由としては私の所属する組織はシイタケの原木栽培をしているため、原木の安定的な入手ルートがあるためです。

結果として以下の通り、立派な菌核の形成ができる栽培法を検討しました。

野外で栽培した茯苓の菌核。泥にまみれている。

しかし、ご覧の通り、不定形で泥や砂利、草や虫などにまみれています。あと水を吸った原木はすごく重いです(あと掘り出したりする労力もなかなかのものです)。この菌核を採取し、皮を剥こうとしましたが非常に分厚く、見た目の半分も最終的には残りませんでした。つまり野外での茯苓栽培は歩留まりが悪く、労力がかかり、効率的では無いことが分かりました(40%以下)。

そこで野外で埋設して栽培するのではなく、原木を短くし、耐熱性の袋に入れた後、滅菌した上で茯苓の菌糸を接種する方法に転換しました。

結果としてきれいな球状の茯苓菌核を得ることができました。

この方法だと女性でも片手で原木を扱うことができ、労力もあまりかかりません。将来的にはコミュニティを活用した栽培グループを作っていきたいですね。

この菌核は写真の通り、きれいに球状であり、皮もごく薄いことから剥皮によるロス率は10%未満です(野外栽培では60%未満)。

このように茯苓菌核の栽培法は確立できましたがそこに立ちはだかるのが薬の値段を厚労省が決める「薬価」です。「薬価」でお値段を決めることで薬の価格を不当に吊り上げたりできないようにしていると思うのですがブクリョウの場合、これが中国産の茯苓の値段で決められているので乾燥茯苓のお値段は1㎏でおおよそ2000円です(生重では2.2㎏程度に相当します)。たとえばシイタケでは100g、生重で250円くらいかと思いますので同じ重さで5000円以上で売れることになります。

これじゃ、きのこの生産者は誰も作ってくれないですよね。

でもとりあえず技術を自衛のためにも国内で持っておくことが重要だと私は考えています。

上記していませんがいくつか特殊な工程がありますので特許を取得しています。ご興味がありましたら→こちらをご覧くださいませ。

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