きのこ研究者が一般の方から生産者、研究者向けにユルく、時にスルドく「きのこの話題」を提供するブログです! In this blog, mycologist-O provides mushroom topics from the general public to producers and researchers!

きのことSDGsのおはなし④[濫用されるSDGs!~SDGsのためにあなたができること~]

きのことSDGsのおはなし④[濫用されるSDGs!~SDGsのためにあなたができること~]

最近はテレビでも新聞でもあらゆるところにSDGsが出てきて猫も杓子もSDGsという現在の状況にぶっちゃけ食傷気味の方も多いのではないでしょうか?

そもそもSDGsとあまり関連が無かったり、SDGsとの関連を謳いながらその説明をほとんどしないようなテレビ番組なども今は少なくありません。私自身、SDGsに異議はないのですがこのような現状に違和感を覚えています。

具体的に私自身が疑問に感じているのは以下の点です。

1.メディアに利用されるSDGsはどこに向かうのか?
→SDGsの本来の目的である「持続可能な開発目標」を追求できるのか?

.SDGsとどのように向き合っていくべきなのか
→自分自身にとってのSDGsとは何なのか?みんなが関われるようにするにはどうすればよいのか?

3.SDGsはお金儲けの手段なのか?
→お金儲けなのか、ボランティアなのか?どのように考えるべきなのか?

[SDGsとどのように向き合えば良いのか??]

SDGsについて私個人や仕事との関連を1年間ほど、考えていく中でSDGsは多くの人と意見を共有できる素晴らしい考えだと実感しています。ただ、全く問題が無いかと言えばそれはウソになるでしょう。一部では矛盾もあります。普段から業務※1や個人的※2にもSDGsに取り組んでいる(つもりの)私ですがSDGsの大前提である「誰一人取り残さない」が果たして達成できるのかと思ったりもします。

※1 一応書いておくときのこ栽培やきのこ産業についてです!今回きのこのお話はないので。。→一応、研究詳細
※2 無償の講演活動、地域活動への参加など

さらに昨今の国内SDGs事情、特にメディアでの扱いを見ていますと「今やっている仕事や活動(個人的なものも含めて)においてどの目標やターゲットにあてはめるか」が最終目的になってしまっているように感じています。

 
自分のやってることが何に該当するか考えるのは間違いじゃないんだけど・・・SDGsを取り入れるにはどうすればいいのかな・・・

でもSDGsの本来の目的はそうじゃないんでしょうね。重要なのはSDGs=持続可能な開発目標」から分かるようにミライへ繋げること。そのために「今すぐできる!SDGs達成のためにあなたができること」を下に挙げてみましょう。

1.自分の所属する組織・機関の活動(業務等)がSDGs上の何に当てはまるのか考えてみる。→まずは組織レベルで。

2.今度は個人レベルで自分の活動(仕事上の業務や地域・コミュニティにおける役割)がSDGs上の何に当てはまるのか考える。→ここで初めて個人レベルでSDGsを考えてみる。

3.SDGsのため、というよりも自分の業務や個人的活動をより快適かつ、サステナブル(=持続可能)にするためにできることを思考し、試行する。→具体的には「業務の効率化」や「地域活動への積極的参加」(町内会なども含めても良いと思います)

4.3における活動がSDGsに合致するか考えてみる。例えば上記「業務の効率化」は「QWL向上や省エネ、コストカットなど無駄をなくすこと」に、また「地域活動への積極的参加」は「住みやすい街づくり」に繋がります。これらは自然とSDGsにおける「8働きがいも経済成長も」や「11住み続けられるまちづくりを」をはじめとして、さらには13から15までの環境に関連するゴールなどに貢献しています。

[ここがポイント!!]
SDGsと実生活(上記の業務や活動など)どちらかに偏りすぎるとその関係は破たん(=末長く継続することができない)してしまいます。SDGsを思考における中心にするのではなく、飽くまで自分の仕事や活動をメインにし、今後も快適に活動する=”持続可能”」にするにはどうすればよいかSDGsとの妥協点を探ることが重要です。

もう見飽きたかもしれませんが。。一応貼っておきますね。

上記を私自身に当てはめてみると
まずは業務レベルで考えてみます。弊所(一財日本きのこセンター菌蕈研究所)では・・

・諸外国からのきのこ栽培に関する指導支援要請や研究連携に応えている→1貧困をなくそう、2飢餓をゼロに、17パートナーシップで目標を達成しよう
・鳥取県内外の地域社会における講演会要望に応えている。→4質の高い教育をみんなに詳細は[きのことSDGsのおはなし②]へ
・きのこに関する各種技術開発を行っている。→9産業と技術革新の基盤をつくろう詳細は[研究実績R&D]へ
・環境保全型、循環型農林業としてきのこ栽培を推進している。→11-15の環境関連ゴールにも貢献(詳細は[きのことSDGsのおはなし①]へ
菌蕈研究所は主にこれらのゴールに貢献していることになります!

そして、私個人レベルでは・・

上記の業務や講演会(これは個人レベルでの活動が多いのですが)に加え、
・町内会やスポーツイベントに積極的に参加し、地域活動を重視する。→11住み続けられるまちづくりを

とりあえずこんな感じになるかと思います。でもよくよく見てみると業務ではSDGsに多分に貢献しているのに個人レベルではこの程度なんですね。私自身、書いてみて初めて実感しました。実際仕事の拘束時間は長いですし、当たり前かもしれません。そうなると社会人なら普段のお仕事、学生ならプライベートをSDGsに対する貢献の軸に考えると良いということになります。

[SDGsはお金儲けの手段?]

ここまで考えたところでビジネスにおいて導入されるSDGsは単なるお金儲けの材料なんだろうかって思いました。例えば売上、利益が何億、何百億となるような大きな大企業レベルだったらSDGsやってます!というだけでイメージ戦略は達成です。消費者は「おー!この企業はSDGsやっとるなー!」というわけでイメージ向上が伴い、数千万円?、場合によっては数億?の増益につながるはずです。でも中小、零細企業ではどうでしょう? もちろんSDGsに取り組んでいることに意味がないわけではありませんし、どのような規模のビジネスであってもイメージ向上は間違いないでしょう。でも利益に果たしてつながるのでしょうか。以前、SDGsに関する講演会で同様の質問を受けたことがあります。「中小企業がSDGsに取り組むことは増収益につながるのでしょうか?」と。

この答えはまだ私の中でしっかりとした形にはなっていないのですが、上にも書いたようにSDGsを思考における中心にするのではなく、飽くまで自分の仕事や活動をメインにし、今後も”持続可能”にするにはどうすればよいか検討する中で結果的にSDGsに貢献できるというのが理想的な気がします。それでもお金儲けの手段になるのは仕方ないのかもしれません。

ただ、最初に書いたように「猫も杓子もSDGs」となるとネガティブな印象を持たれがちで折角のSDGsも今後は正当な評価をされなくなっていく可能性もあります。そのためにはSDGsとは何なのか、どうやって取り組むべきか、といったところから皆で意識共有することが重要かと思います。私自身も今後も「きのことSDGs」の関連というニッチな講演(笑)やこのブログで少しでも貢献できれば良いですね。

[さいごに]
全てのSDGsにおけるゴールを達成できるような人はあまりおられないでしょう(ゼロではないでしょうけど)。だから自分ができないSDGsのゴールについても理解し、それに取り組んでいる人たちを正しく評価する寛容さを心に持っておくことは大事です。それによってSDGsにおける17のゴールのうち、自分には関連無さそうな項目でさえも貢献できます。私の場合、明らかに関わることができていないゴールに「ジェンダー」や「エネルギー」などがあります。少しずつでもこれらに対する理解も深めていきたいと思っています。


最新情報をチェックしよう!